病院喰い 阻止編
スカーフェイスの眞理亜
き こ だ じん
木 公 田 晋 著
ベテラン医業経営コンサルタント(公認会計士)がはじめてペンネームで小説を書いた。民間総合病院を舞台にその経営実態に迫り、そこに入り込み甘い汁を吸おうと企み暗躍するヤクザ者。これに対し頭脳明晰で才色兼備の病院経営者である主人公・眞理亜が斬新な経営改革でヤクザ者の策略に対抗する。それは喰うか喰われるか虚々実々の攻防である。民間病院経営の熾烈な舞台裏がリアリティをもって描き出される。
永年病院経営の裏表を見てきた医業経営コンサルタントならではの迫力ある社会派サスペンス。著者が小説の形をとって訴えたかったのは、民間病院経営がヤクザ者に“打たれ弱く”、だまされやすいこと。そして医師が中途半端な形で病院経営することの危うさ。
また、病院経営には“本物”がいかに少ないかということ、さらに何のために病院を経営するのか、志や理念の欠如などにも暗に触れる。強くなった女性に対し、草食系化している男性の弱さにも及び。おそらくここまで民間病院経営の暗部に切り込んだ小説は初めてだろう。
筆者は油絵も描く。多芸多才な人。
出典: 医療タイムス(2010年2月1日 No.1951)
A5判 376ページ/定価1500円+税
文芸社 TEL 03-5369-2299